ギターの木部が浮いた、割れた、剥がれた。
そんなときに多くの人が一度は悩みます。

「ギターに木工用ボンドって使っていいの?」
瞬間接着剤は強そうだけど怖い。
楽器用の専用接着剤は高いし、どれを選べばいいか分からない。
この記事では、ギターリペアの現場で実際に使われている「タイトボンド」を軸に、
- 木工用ボンドはギターに使っていいのか?
- なぜタイトボンドが選ばれるのか?
- 使ってはいけないケースはどれか?
を、初心者でも失敗しない目線で解説します。
インディングが浮いた・ナットが動く…それ、木工用ボンドで直していい?
ギターのトラブルといっても、すべてが大掛かりな修理とは限りません。
たとえば――
- バインディングが部分的に浮いてきた
- ナットが少し動く、ガタつく
- 木部の接着がわずかに剥がれてきた
- 割れやヒビはあるが、演奏自体はできる
こうした状態を見ると、多くの人がこう考えます。

修理に出すほどじゃない気がする
自分で直せそうだけど、接着剤選びを間違えるのが怖い
まさに、この記事はそのレベルの「軽度な接着トラブル」を想定しています。
逆に、
- ネック折れ
- 大きな構造破損
- 強度や角度がシビアに関わる修理
といったケースは対象外です。
無理にDIYすると、取り返しのつかない状態になることもあります。
だからこそ重要なのが、
「強ければいい接着剤」ではなく「音を殺さず、将来やり直せる接着剤」を選ぶこと。
この条件に合致する代表例が、ギターリペアの現場で長年使われてきたタイトボンドです。
バインディングの浮き・部分的な剥がれ
バインディングが部分的に浮いている程度であれば、タイトボンドでの接着は現実的な選択肢です。
重要なのは「完全に外れていない」「構造に影響が出ていない」こと。
このレベルであれば、
音への影響を抑えつつ、将来の再修理も可能な接着が求められるため、
可逆性のあるタイトボンドが適しています。
※ 縮みや塗装割れを伴う場合は、DIY修理の範囲を超えるため注意が必要です。
ナットが動く・ガタつく場合
ナットは「強力に固定する部品」ではありません。
弦の張力によって位置が決まるため、接着はズレ防止程度で十分です。
そのため、
- 少量で済む
- 将来外せる
- 音への影響が少ない
という条件を満たすタイトボンドが選ばれます。
瞬間接着剤でガチガチに固定してしまうと、ナット交換時に指板やヘッドを傷つけるリスクが高くなります。
ボンドでガチガチにするとこんなことになります→【失敗事例あり】フェンダーギター、ナットの取り外し方、自分でリペアしたい人必見
木部同士の軽度な剥がれ・ヒビ
ボディやヘッド周りの木部同士が、わずかに剥がれている・口を開いている程度であれば、タイトボンドによる補修が有効な場合があります。
ただし、
- 割れが広がっている
- 力のかかる部位である
- クランプ圧が必要
といった場合は、DIY修理は慎重に判断すべきです。
指板エッジ・装飾部の浮き(軽度)
指板周りの装飾やエッジ部分がわずかに浮いている場合も、木部同士であればタイトボンドが使えるケースがあります。
ここでも重要なのは、「強く固めない」「余分な接着剤を残さない」こと。
逆にタイトボンドを使ってはいけない修理は記事後半で紹介しています。
結論:ギターに木工用ボンドは「条件付きで使っていい」

まず結論から。
ギター修理に木工用ボンドは使えます。
ただし、条件があります。
- 木部同士の接着である
- 将来、再修理の可能性がある
- 音への影響を最小限にしたい
この条件を満たす場合、タイトボンド(特にオリジナル/赤ラベル)は非常に相性が良い接着剤です。
逆に、「とにかく強力に固めたい」「二度と外れないようにしたい」という発想は、ギター修理では失敗の元になります。
なぜギター修理でタイトボンドが使われるのか?
タイトボンドが楽器リペアで使われる理由は、単に「よくくっつくから」ではありません。
理由① 音を殺しにくい
ギターは木の振動で鳴る楽器です。
硬すぎる接着剤や、ゴム状に固まる接着剤は振動を阻害し、音を鈍らせます。
タイトボンドは木材同士の接着に特化した性質を持ち、振動の伝達を妨げにくいのが特徴です。
理由② 将来「剥がせる」=可逆性がある
ここが一番重要です。
ギターは一生モノですが、修理は一度で終わるとは限りません。
タイトボンドは、
- 熱
- 水分
によって再剥離が可能です。
つまり「直せる余地を残した接着」ができる。
これは瞬間接着剤には絶対にできない特性です。
理由③ プロの現場で長年使われてきた実績
海外のギター工房、バイオリン工房でもタイトボンドは定番です。
「楽器用」と書かれていなくても、結果的に一番トラブルが少なかった接着剤として残り続けている、というのが実情です。
タイトボンドはどれを選ぶ?【1・2・3の違い】
タイトボンドには種類がありますが、ギター修理で選ぶのはほぼ一択です。
タイトボンド オリジナル(赤ラベル)

ギター修理に最適
- 適度な接着力
- 可逆性あり
- 音への影響が少ない
タイトボンド II / III はなぜ向かない?
II・IIIは防水性能が高く、屋外家具や水回り向けです。
しかしギター修理では、
- 剥がせない
- 硬くなりすぎる
- 再修理が困難
というデメリットになります。

防水=正義ではないのが楽器修理です。
木工用ボンドを使ってはいけないギター修理
すべてに万能ではありません。
以下はプロでも慎重になるケースです。
❌ ネック折れ・構造破損
- 強度計算が必要
- クランプ圧も重要
- 失敗=致命傷

この場合はプロに任せるべきです。
❌ 塗装面同士の接着
木ではなく塗膜にくっついているだけになります。
一時的に直っても、すぐ再発します。
❌ 金属パーツの接着
- ブリッジ
- ナット(金属製)
- パーツ固定

木工用ボンドの用途外です。
よくある失敗:瞬間接着剤を使ってしまう
「すぐ固まるから安心」そう思って使われがちなのが瞬間接着剤。
しかし、
- 音が痩せる
- 白化する
- 二度と剥がせない
と、後悔するケースが非常に多いです。
ギター修理は「元に戻せる」ことが正解です。
まとめ
ギター修理でタイトボンドが選ばれる理由は、安いからでも、手軽だからでもありません。
- 音を守れる
- 将来の修理を邪魔しない
- 木の性質に合っている
という、楽器として正しい条件を満たしているからです。
特に初心者ほど、「一番無難で、失敗しにくい選択」をすべきです。

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