ギターの金属パーツに発生するサビは、「とりあえず磨けば何とかなる」「専用クリーナーを使えば安心」と思われがちですが、実際には判断を間違えると状態を悪化させることも少なくありません。
というよりも、気づいたら早めに対処することが重要です。
サビは進行型の病気みたいなものです。
サビ落としで重要なのは、どのサビが回復可能で、どこからが限界なのかを見極めることです。
この記事では、
- サビの状態別判断基準
- 洗剤・研磨・交換の使い分け
- なぜギター専用品にこだわらないのか
を、実体験ベースで整理します。
ギターにサビが発生する原因

ギターのサビは、決して古い楽器だけの問題ではありません。
- 手汗・皮脂が金属に付着したまま
- ケース内の湿気
- 弾いた後に拭き取らない
- 定期的な点検・弦交換不足
特に日本の環境では、ブリッジ・ネジ・ペグなどの金属パーツは確実にサビます。
ケース内に放置して、ギターケースはカビだらけ、中のギターはサビだらけというシーンはよくあります。
ギターパーツ専用のサビ落としを使わない理由

市販されている「ギター専用」のサビ落としやクリーナーは、安心感はあるものの、
- 内容量が少ない
- 価格が高い
- 失敗を恐れて使いづらい
と感じるものも少なくありません。
一方で、ギターのサビや汚れの正体は、
- 手汗・皮脂
- 湿気による金属の酸化
といった、家庭内で発生する金属汚れと本質的に同じものです。
そのためこの記事では、「ギター専用」という表記にこだわらず、
- 家庭用として流通している
- 用途・成分が明確
- ギター以外にも使い回せる
凡庸性の高い洗剤・クリーナーを中心に紹介しています。
凡庸洗剤を使うメリット
家庭用洗剤を使う最大のメリットは、単にコスパが良いことだけではありません。
- 内容量が多く、試行錯誤しやすい
- 短時間・部分使用が前提で使える
- ギター以外の掃除にも流用できる
結果として、失敗しにくく、再現性が高いという利点があります。
※ 専用品を否定しているわけではなく、「仕上がりに決定的な差が出るとは限らない」という実体験に基づく判断です。
この状態はまだ大丈夫?放置してよいサビ・危険なサビの見分け方

ギターの金属パーツに違和感を感じたとき、多くの人がまず悩むのが「これって今すぐ対処すべき?それとも様子見でいい?」という判断です。
サビ落としで失敗する原因のほとんどは、やり方”ではなく判断のタイミングにあります。
ここでは、写真がなくても判断できるように、触感・見た目・変化の仕方で見分ける基準を整理します。
放置しても大きな問題になりにくい状態(経過観察OK)
以下に当てはまる場合は、急いで強い洗剤や研磨を使う必要はありません。
- 金属の光沢はまだ残っている
- 変色しているが、触ってもツルツルしている
- 乾拭きや軽いポリッシュで多少改善する
- 指で触っても粉やザラつきが出ない
この段階は、サビというより酸化皮膜や汚れの可能性が高く、無理に落とそうとすると逆に傷を増やします。

基本は「拭く → 軽く落とす → 進行させない」で十分です。
早めに対処すべき状態(放置NG)
次の状態が見られる場合は、放置すると確実に悪化します。
- 表面が白っぽく濁っている
- 触るとわずかにザラつきを感じる
- 拭いても見た目がほとんど変わらない
- 以前より変色が広がってきている
この段階は、白サビ・初期腐食に入っている可能性が高く、美観を回復できる最後のラインです。

この状態で何もせず放置すると、次は赤サビに進行します。
危険信号|すでに手遅れの可能性が高い状態
以下に当てはまる場合は、「元に戻す」ことを前提にしない方が現実的です。
- 赤茶色のサビが定着している
- 表面が明らかに荒れている・凹凸がある
- 触ると粉が指に付く
- サビを落としても黒ずみやムラが残る
この状態は、金属そのものが腐食している段階です。
酸性洗剤や研磨でサビ自体は薄くできても、
- 表面の荒れは戻らない
- メッキ剥離のリスクが高い
- 見た目の完全回復はほぼ不可能

この場合は「どこまで妥協するか」「研磨か交換か」という判断に切り替える必要があります。
迷ったらこの基準で判断する
判断に迷ったら、次の3つで考えてください。
- 触って粉が出るか? → 出るなら危険
- 拭いて改善するか? → しないなら中度以上
- 赤色が定着しているか? → 手遅れ扱い
サビ落としで一番やってはいけないのは、「よく分からないまま強い方法を試すこと」です。
よくある誤解|「磨けば直る」「専用品なら安全」は本当か?
ギターのサビ対策で、特に多いのが次の2つの誤解です。
- とりあえず磨けば何とかなる
- ギター専用品を使えば失敗しない
結論から言うと、どちらも半分正解で、半分危険です。
誤解①|磨けば元に戻る
研磨は、サビを落とす方法として確かに即効性があります。
しかし研磨とは、サビだけでなく金属そのものを削る行為です。
- 表面は一時的にキレイに見える
- しかしメッキは確実に薄くなる
- 将来的にサビやすくなる
特に、
- ブリッジ
- ペグ
- ネジ類
などのメッキパーツは、一度削ると元には戻りません。
メッキが禿げているパーツは美観は回復しませんよ。

研磨は「回復」ではなく「妥協」
という位置づけで使うべき方法です。
誤解②|ギター専用品なら安全
「ギター専用」と書かれていると、つい安心してしまいがちですが、ここにも落とし穴があります。
- 内容量が少なく試しづらい
良い結果がでない場合他製品という流れはコストパが悪すぎます。
結果として、

安全そうで、実は再現性が低い
なぜ専用品にこだわらないのか(再確認)
この記事で、あえて家庭用・業務用の凡庸洗剤を使っている理由は明確です。
- 成分と用途がはっきりしている
- 短時間・部分使用が前提で考えられる
- ギター以外にも使い回せる
- 失敗してもダメージが最小限
ギターのサビや汚れの多くは、
- 手汗
- 皮脂
- 湿気による酸化
といった、家庭内の金属汚れと本質的に同じものです。

「ギター専用=特別な汚れ」ではない
本当に安全なのは「方法」ではなく「判断」
サビ落としで重要なのは、
- 何を使うか
- どれくらい強いか
ではなく、「今そのサビに、何をしていいのか」を正しく判断することです。
- 軽度なら落としすぎない
- 中度なら短時間で確実に
- 重度なら無理に戻そうとしない
この判断ができていれば、
- 専用品
- 家庭用
- 業務用
どれを使っても、致命的な失敗は避けられます。
「落とす」より「壊さない」
サビ落としは、キレイにする作業ではなく、これ以上悪化させないための作業です。
- 落とせるサビ
- 落とすべきでないサビ
- もう割り切るべき状態
これを見極めることが、結果的に一番ギターを長持ちさせます。

クリーニング=建材の保全です
【重要】ギターのサビは「状態」で判断する
サビ落としで最も重要なのは、どの段階のサビなのかを正しく見極めることです。
ここでは、3段階に分類しさらに詳しく解説します。
軽度のサビ|くすみ・酸化皮膜レベル

状態の目安
- 金属光沢が残っている
- 表面はツルツル
- 変色・くすみ程度

この段階は、サビというより汚れや酸化皮膜です。
対処法
- 金属ポリッシュ
- 中性洗剤
- ごく軽い研磨
美観はほぼ完全に回復します。
おすすめは、中性系とクエン酸などの自然派系の洗剤です。
▶ 中性系で安全に落とす方法
【レビュー】茂木和哉のさび落としをギターベースの金属パーツに使ってみた、中性タイプで安全&高コスパ!
▶ クエン酸で安全に落とす方法
サビ落としに専用洗剤は必要か?クエン酸でギターパーツの錆落としは可能?
中度のサビ|白サビ・初期腐食(回復可能な限界ライン)

状態の目安
- 表面が白っぽく濁る
- 触るとわずかにザラつく
- 赤サビには至っていない

この状態を「中度のサビ」と定義します。
ここが、美観を回復できる最後のラインです。
対処法
- 酸性洗剤(短時間・部分使用)
- 分解できるパーツのみ作業
▶ 酸性洗剤の考え方
酸性ヌリッパーのメリットとデメリット、掃除のプロが教える使い方ガイド
▶ 実例
【10分完了】ギターパーツの錆をまるごと落とす方法。コスケムの酸性ヌリッパー
【10分完了】ギターブリッジクリーニング、サビとホコリ汚れを酸性ヌリッパーで一掃
5分で終了、テレキャスターブリッジのホコリとサビを一掃する方法、酸性ヌリッパーを使用。
楽々低コスト洗剤でベースブリッジのサビを一掃する、酸性ヌリッパーのメリット
重度のサビ|赤サビが広がっている状態

状態の目安
- 赤茶色のサビが定着
- 表面が荒れている
- メッキ下まで腐食している可能性
判断:基本「手遅れ」
赤サビが広がっている場合、金属そのものが腐食しています。
酸性洗剤でサビを落とせたとしても、
- 表面の荒れは戻らない
- 美観は新品同様にならない
- メッキ剥離のリスクが高い

この段階では、研磨で妥協するか、交換するかという判断が現実的です。
▶ 研磨例
【10年分のサビ】ギター金属パーツの錆落とし洗剤でスライトバー復元、凄い錆を落とした
▶ 交換
【初心者でもできる】ギターのペグ交換を自分で行う方法
サビ落とし方法別の特徴まとめ

酸性洗剤
- 白サビまでが対象
- 効果は高いが扱いを誤ると危険
▶ クエン酸 vs ヌリッパー
【手遅れ注意】ギターパーツのサビはすぐ対処、洗剤比較、クエン酸か酸性ヌリッパーどっちを選ぶ?
研磨
- サビと一緒に金属も削れる
- 元には戻らない
交換
- 音質・演奏性の改善が確実
- 長期的には最も合理的な選択の場合もある
サビ落とし洗剤の比較まとめ
▶ 洗剤比較記事
【ギター金属パーツのサビ落とし完全ガイド】酸性ヌリッパー・中性・クエン酸の違い|最適なサビ落としはどれ?
よくある失敗と注意点
- 赤サビを落とせる前提で作業する
- 酸性洗剤のつけすぎ
- メッキパーツへの長時間使用
落とすことより、壊さないことが最優先です。
ギターをサビさせないための日常メンテナンス
- 演奏後に金属部を拭く
- ケース内の湿度管理
- 弦交換時の軽点検
まとめ
- 中度は白サビまで
- 赤サビは重度・手遅れ扱い
- 専用品にこだわらず、合理的に判断する
この基準を持つだけで、ギターのサビ落としは失敗しなくなります。

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