物価高騰が続くなか、子育て世帯にとって「ギターに何万円もかける」というのは正直かなりハードルが高い。
でも、だからこそ思うんです。安いギターを自分の手で育てて、本家(上位機種)を食ってやろう、と。
前回、プレイテックのテレキャスターのリード線をGavitt製ビンテージクロスワイヤーに交換し、音の変化を記事にしました。今回はその第2弾、ポット交換編です。
ポットはボリュームやトーンの効き方を直接左右するパーツ。
安ギターの「なんとなく音がぼやける」「トーンを絞ると急に音が痩せる」といった悩みの原因になっていることも多いので、リード線交換と並んで効果を実感しやすい改造のひとつです。
- ポットを交換すると本当に音は変わるのか(純正 vs Alpha 250kΩで比較)
- 失敗しないポットの選び方
- ポット交換の基本的な流れ
順番に見ていきます。
ポット交換で音は変わるのか?
まず今回のプレイテック テレキャスターに付いていた純正ポットを見てみると、正直どんな特性のポットなのか分かりません。
そこで今回は、純正ポットからAlpha製の250kΩ(ボリューム:Aカーブ、トーン:Bカーブ)に交換して弾き比べてみました。

録音環境は音源、ゲイン、トーン設定、ピックまで全て一緒

手持ちのフェンダーUSAのテレキャスターだと、両方を少し絞ると音がふくよかに太くなり、いわゆる「絞ったときの美味しいトーン」が出ます。
ところがプレイテックの純正ポットだと、絞った分だけ単純に音がか細く痩せていくだけで、太さのようなものが乗ってこない。

ここを改善したい
同じ「絞る」という操作なのに、出てくる結果がまるで違いました。
Alphaに交換してから同じように弾き比べてみると、絞ったときの痩せ方がかなり穏やかになり、本家のような「太くなる」とまではいかないものの、少なくとも「絞ると単純に音が細くなるだけ」という物足りなさは軽減されました。
なぜこの違いが出るのか、少し掘り下げてみます。
ボリュームを絞るという動作は単に音量を下げているだけではなく、ピックアップとポットの電気的な相互作用によって周波数特性そのものが変化します。
- ポットの質・抵抗値の実測精度が低いと、絞ったところで信号が単純に減衰するだけになり、「太さ」を生む相互作用が起きにくい
- 上位機種には、絞ったときに高域が痩せすぎないようコンデンサや抵抗を仕込んだ「トレブルブリード回路」が入っていることがあるが、プレイテックにはおそらくこれがない
- 配線材やハンダなど、信号経路全体のクオリティも絞ったときに残る帯域に影響する
つまり「本家は絞ると太くなる、プレイテックは絞った分だけ細くなる」という違いは、思い込みではなく実際に起きている電気的な差です。
今回、質の良いAlphaポットに交換したことで、その差の一部を埋められたことになります。
「劇的に音色そのものが変わる」というより、絞ったときの音の残り方・コントロール性が上がるというのが、今回の交換で一番実感した変化です。
これによって、ボリュームやトーンを絞って音作りするという、本家テレキャスターと同じ弾き方・使い方がプレイテックでもできるようになったと言えます。
客観データでも確認してみる
いかがでしょうか?
体感だけでなく、実際にスペクトログラムでも比較してみました。
使ったのはSoniqTools(soniqtools.com)というオンラインの音声解析ツールです。

旧ポッドとAlphaのクリーン録音を「差分」表示で比較。
サステイン部分はほぼ緑(3dB未満の差)で近いが、ピッキングのアタック部分(高域)に一定間隔で赤〜ピンクの差が出ている
同じ2音源を並べて表示。低域〜中域のエネルギー分布や減衰カーブはほぼ同じで、パッと見ただけでは違いが分かりにくい

歪みをかけた音でも同じ検証をしてみました。
歪みでも同様に、サステインは近いがピッキングのアタック部分に規則的な差が出ている。

クリーンより差分の密度がやや高く見える
並列で見るとクリーン時と同じく、全体の色分布・減衰カーブはほぼ同じに見える

クリーン・歪みの両方で同じ傾向(サステインは近い、アタックで差が出る)が再現されたことで、これは偶然ではなくポット交換によるアタック応答の違いは再現性のある現象と言えそうです。
ポットの選び方

いざポットを交換しようと思っても、種類が多くて何を基準に選べばいいか迷うと思います。
ここでは実際に選ぶときに見るべきポイントを整理します。
1. 抵抗値(250kΩ / 500kΩ)
ポットの抵抗値は、ピックアップの種類との相性で選ぶのが基本です。
- 250kΩ:シングルコイル系(テレキャス、ストラトなど)によく使われる。高域が少し丸くなり、耳当たりが柔らかい
- 500kΩ:ハムバッカー系によく使われる。高域が伸びやすく、抜けが良い
今回はテレキャスなので、純正同様250kΩを選びました。
2. カーブ(Aカーブ / Bカーブ)
カーブは、ツマミを回したときに抵抗値がどう変化していくかという特性です。
- Aカーブ:回し始めはゆるやかに変化し、後半で急に変化する。人間の耳の感覚(対数的)に合っているため、ボリュームによく使われる
- Bカーブ:回した分だけ均等に(直線的に)変化する。トーンに使われることが多い
今回はボリュームにAカーブ、トーンにBカーブを選びました。
純正はカーブ不明でしたが、Aカーブに替えたことでボリュームの絞り始めの「効きすぎ」感がかなり改善されました。
3. シャフトの長さ・形状
見落としがちですが、ここを間違えるとノブが取り付けられない、パネルから飛び出す高さが変わる、といったトラブルになります。
- 形状:主にソリッドシャフト(一体型)とスプリットシャフト(割れていてノブの固定ネジで締める)があり、既存のノブと同じ形状を選ぶ必要がある
- 径:プレイテックのテレキャスターはシャフト径6mm。ここが合わないとノブがはまらない
- 長さ:今回は純正と完全に同じ長さのAlphaポットが見つからなかったため、あえて少し長めのものを選択。ちなみにスプリットシャフトは刻み(スプライン)の数でも表記され、今回選んだものは18スプラインタイプ
長さが足りないよりは、長めを選んでおいて必要なら現場で調整する方が失敗しにくいです。
4. ブランドで選ぶ(Alpha / CTS)
ポットのブランドはいろいろありますが、コスパ重視ならAlpha、より上の質を求めるならCTSが定番です。
- Alpha:価格が安く、評判も良い。コストを抑えつつ純正からのアップグレードを狙うならまずここ
- CTS:Alphaよりワンランク上とされる定番ブランド。予算に余裕があれば選択肢に入る
今回はコスパと評判の良さを重視してAlphaを選びました。
ポット交換の手順
ここからは実際の交換作業です。
ハンダ付けの温度管理など、各見出しの動画で詳しく解説しているので、ここでは全体の流れだけ簡単に紹介します。
今回使用した道具、必要な工具

- SCUD ALPHA(アルファ) ポット φ16 250KΩ Aカーブ ミリサイズ ALP-2501
- SCUD ALPHA(アルファ) ポット φ16 250KΩ Bカーブ ミリサイズ ALP-2501B
- HAKKO FX-600温度調整式のハンダごて
- ハンダごて台ST-11
- ケスター44、ハンダ(鉛入りがおすすめ)
- ドライバー、レンチなど(ポットの取り外し用)
- ペンチ
- ピンセット
- カッター
- テスター(配線確認用があると安心)
- 紙やすり400番から1000番
作業の流れ
- コントロールカバーとジャックカバーを外す、配線図・配線の様子を写真に残しておく(元に戻せなくなる失敗を防ぐため)
- 既存のポットを配線から取り外す
- 新しいポット(Alpha 250kΩ)に配線をハンダ付けし直す
- ポットをボディ/パネルに固定し、ノブを取り付ける
- 音出しをして、ガリや接触不良がないか確認する
ポット裏側のアース部分は面積が広く熱が逃げやすいため、ハンダが乗りにくいと感じたら焦らず温度を見直すのがポイントです。
このあたりの実際の手つきは動画の方が伝わりやすいので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。
コントロールカバーとジャックカバーを外す

配線図・配線の様子を写真に残しておく(元に戻せなくなる失敗を防ぐため)

既存のポットを配線から取り外す
一点だけ注意があります、ポッドは再利用しませんので、安心して作業すすめてください
ご覧のとおり配線が混み合っているので、ハンダごてが不意にリード線に接触すると被膜が溶けます。
そこだけ注意が必要です、なので解体作業は上の配線から撤去していきました。
アース線
FX-600を400℃に設定して、ポッド背中のハンダづけされたパーツを外していきます。

なかなか簡単に溶けない部分です、コツは追いハンダすることです。
少しだけハンダをくれてやります
その結果、簡単に溶解して作業が簡単になります。
小手先をCタイプにすると熱が伝わりやすくなるためおすすめです。

ポッド背中ハンダの溶かし方解説動画↓
ホット線

FX-600を350℃に設定して、ハンダごての腹を当てる感じで作業する。
ポッドの背中よりも簡単に溶けます。
非常に配線が混み合っているので、ピンセット必須です
ポッドの準備
酸化皮膜を除去する

ハンダが乗りやすいように、ポッドの酸化被膜を削ります
400番の紙やすりと仕上げにスチールウールで磨きました
セオリーでいえば、400番から番手を上げていくのが正解でしょうが・・・
ギターポッドの下準備から予備ハンダまで解説動画↓
予備ハンダとアース処理
3本ある端子のうち1本を折り曲げてケース(背中)に接触させ、ケースをアースに落とす処理です。
ラジオペンチですると根本からくるっと折り曲げれる

接触しているつもりでも浮いていることが意外と多く、ノイズの原因になりやすいので要チェックです。

念の為チェックするのが確実です

テスターは導通モードで、端子は背中と折り曲げた端子に接触。
結線箇所の端子に予備ハンダをします
予備ハンダの手順を動画で解説しました
結線
作業も大詰めです、結線は先ほど施した予備ハンダを溶かした瞬間にリード線を接続する作業です。
今回は背中から作業をしましたが、おそらく端子からつまり下の方から作業したほうが、他のリード線がじゃまにならず作業できます
動画でも解説しています
ポッドの背中、結線

一ヶ所の半田に3本接続されている黒のリード線・・・ピックアップのコールド2本とブリッジアース、ですが、一本ずつ結線させていきました。
前に取り付けたリード線が外れることもなく作業できました。
端子、結線

画像のとおり、リード線が混み合っています。
結線作業は、下になる配線からやるのが正解でした。
他のリード線にコテ先があたるシーンが何回かありました・・・
まとめ
純正ポットからAlpha 250kΩへの交換で、音色そのものよりもボリューム・トーンを絞ったときの音の残り方・コントロール性が大きく改善しました。
これは単なる「音が良くなった」以上に、本家テレキャスターと同じようにボリューム/トーンを使った音作りができるようになったという意味で、大きな一歩だと感じています。
数千円の投資でここまで弾き心地が変わるなら、リード線交換に続いておすすめできる改造です。

次回、第3回はナット交換編。
牛骨ナットへの交換で、さらにプレイテック テレキャスターがどう化けるのか、引き続きお付き合いください。

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