正直に告白します、私には子供が5人いて、住宅ローンも抱えています。
物価高騰も追い打ちをかけて、正直「ギターにお金をかける」という選択肢は、もうほとんど残っていません。
それでも、ギター好きの性というのは厄介なもので、あれもこれも気になってしまうんです。
ジャガーの浮遊感のあるトレモロ、セミアコの箱鳴り、アーム付きギターの表現力、P90ピックアップならではの太くてジャキっとした音……。
挙げていけばキリがありません。
でも、本家(本物)を買うお金なんて、今の私にはとても捻出できない。
このまま「欲しいけど買えない」を抱えたまま一生を終えるのか……そう考えていたときに、ふと思いついたんです。
格安メーカーのギターでも、自分の手で育てていけば、それなりのところまで行けるんじゃないか。
そこで今回、14000円のプレイテックテレキャスターを手元にあったGavitt製ビンテージクロスプッシュバックワイヤーに、まずは配線材から交換してみることにしました。
この連載「格安ギターを一流に育てる」は、そんな私と同じように「お金はかけられないけど、ギターは諦めたくない」社会人ギタリストに向けた記録です。
第1回はリード線(配線材)の交換編、まずは結論から聴いてもらいます。
【結論】リード線交換だけでここまで変わる
先に結論です。
今回、内部のリード線をGavitt製ビンテージクロスプッシュバックワイヤー(7本撚線・AWG22)に交換しただけで、音の輪郭がはっきりと変わりました。
今回交換した配線は、ピックアップからのリード線とブリッジアースワイヤー以外のものです
特にピッキングの瞬間の”キレ”や高音弦の抜け方に違いが出ています。
まずはクリーントーンから聴き比べてみてください。
比較音源ではリード線以外のセッティングは変わりません。
ピックも同じものを使用しています
クリーントーン|変更前
クリーントーン|変更後
いかがでしょうか。
変更後の方が、ピッキングした瞬間の音の輪郭がくっきりして、テレキャスター特有の”キレ”が出ているのがわかると思います。

倍音が強く出ている気がする
歪ませた状態でも比較してみました。
歪みトーン|変更前
歪みトーン|変更後
変更前は歪み方がやや荒く粒が揃わない印象でした。
変更後は
- 歪みの粒立ちが揃い
- フレーズの輪郭が保たれたまま歪んでいる
という気がします
この違いが「気のせい」ではないことを、後半でスペクトログラム(周波数の可視化データ)を使って検証していきます。
なぜプレイテックのテレキャスターを選んだのか

そんな中で、なぜPlaytechのテレキャスタータイプを選んだのか。
理由はシンプルで、実勢価格が数万円台と手が出しやすく、パーツ交換の土台としても十分なポテンシャルを感じたからです。

値段以上と評判もよいですしね
いきなり数十万円のギターに手を出すのはハードルが高くても、この価格帯なら「失敗してもいい」という気持ちで気軽に手を入れられます。
それに、自分の手で一つひとつ改善していく方が、コストを抑えられるだけでなく「自分でギターを育てている」という愛着も湧いてきます。
この連載では、このギターを軸に、リード線→ブリッジアース(ノイズ対策)→ポット→ナット→ピックアップの順にパーツを交換し、どこまで音を追い込めるかを検証していきます。
関連記事;【本音レビュー】Fender USAオーナーがプレイテックのテレキャスター(ゴールド)を衝動買い!ぶっちゃけ違いはある?

フェンダーUSAと比べて感じた”物足りなさ”
比較対象として、私はフェンダーUSA製のテレキャスターを所有しています。
Playtechを弾いてみて率直に感じたのは、次の2点でした。
- テレキャス感、キレの無さ:ピッキングした瞬間の”パキッ”とした立ち上がりが弱く、音の輪郭がぼやける印象
- 歪み方の荒さ:ディストーションをかけた際に、音の粒が揃わず荒っぽく歪む
もちろん、価格差を考えれば「格安ギターだから仕方ない」で片付けることもできます。
ですが、今回はその”仕方ない”を一つずつ検証し、原因を切り分けていくことにしました。
仮説|配線材(リード線)が音質に影響しているのでは?

最初に着手したのはリード線です。
ギター内部の配線材は、ピックアップが拾った信号をジャックまで届ける”通り道”にあたります。
安価なギターに使われがちな配線材は、導体間の静電容量(キャパシタンス)が高めのものが多く、これがコンデンサーのように働いて高域成分を減衰させてしまうことがあります。
つまり、ピックアップ自体は高域の情報を拾えていても、配線の途中でその情報が目減りしてしまっている可能性があるということです。
そこで今回は、静電容量が低めに設計されているとされるビンテージ仕様のクロス被覆ワイヤーに交換し、この仮説を検証してみることにしました。
使用したパーツと道具
今回使用したのはこちらの2点です。
- Gavitt製 ビンテージクロスプッシュバックワイヤー 7本撚線 AWG22:ヴィンテージ機材にも使われる仕様を再現したクロス被覆の配線材。撚線構造で取り回しがしやすく、AWG22は太すぎず細すぎずギター内部の配線作業に扱いやすい太さです。
- HAKKO FX600:温度調整がしやすく、細かい配線作業でもコテ先の熱量が安定しているはんだごて。ギター内部のような狭いスペースでの作業でも扱いやすいのが利点です。
- ケスター44:音響用ハンダの鉄板アイテム、ハンダの溶け具合や流れ具合が非常に使いやすいアイテム
その他使用した道具は、
- ハンダゴテ台ST-11
- ピンセット
- ペンチ
- ➕ドライバー
リード線交換の手順

作業前に、まずは既存の配線状態を確認しておきます。
特に中古ギターをリペア・改造しようと考えている場合、購入時点で断線や接触不良を抱えているケースも珍しくないので、作業前に一度チェックしておくと安心です。
テスターでのチェック方法は、過去記事「テスターで電装系をチェックする」で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
作業工程は以下の通りです
- ピックガードまたはコントロールキャビティを開ける
- 既存の配線をテスターでチェックし、断線・接触不良がないか確認
- 交換対象のリード線をはんだごて(HAKKO FX600)で取り外す
- Gavittのビンテージクロスワイヤーを適切な長さにカットし、被覆をむく
- ポット〜ジャック間を順にはんだ付けしていく
配線後、音出しチェックをします。
つまずきやすいポイント
- クロス被覆は熱に弱いため、はんだ付けの際に被覆を溶かさないよう注意
- 「7本撚線」とはいえ被覆で1本にまとまったワイヤーなので、バラける心配はなく取り回しはしやすいです
1,ピックガードまたはコントロールキャビティを開ける
テレキャスターの場合、弦を外さずに作業ができます。
ドライバーで、コントロールキャビティの2箇所のネジを外し、プラグジャックの4箇所のネジを外すだけです。
2,既存の配線をテスターでチェックし、断線・接触不良がないか確認
特に中古で買ったギターは不具合を確認しておきましょう
配線の状況も写真に撮っておくことで、接続ミスを防ぐことができます。
どうせ配線を外すので、ポッドの異常確認をしておきましょう、いつか寿命がきますので


3,交換対象のリード線をはんだごて(HAKKO FX600)で取り外す

今回使用するのは温度調節機能付きのギターリペア鉄板アイテムHAKKO FX-600です。
370℃に設定して作業していきます。
このギターを開けてびっくりしたのは、ポッドの大きさです。
貝柱ほど小さい、本来はもう一回りでかいのですが、・・・そのため配線が非常に混み合っています
作業中に残すリード線を焼かなように要注意ですよ。

配線が細く非常に、やわらかいからね
撤去する配線は、上から撤去した方が無難です。
ギターポッドの上のハンダはなかなか溶けない場合は、追いハンダで対応しましょう。

4,Gavittのビンテージクロスワイヤーを適切な長さにカットし、被覆をむく

外した配線と同じ長さにGavittのビンテージクロスワイヤーをカットします。
皮膜が布タイプです、私は皮膜のカットはせずに、押し込んでワイヤーを出し使用しました。
卸したては皮膜がロウで硬いので手で少し温めると、簡単に皮膜を剥くことができます
ワイヤーは単芯状態なので、よってまとめたり、予備ハンダ(メッキ加工)の手間が不要です。
仕上がりの見た目も、ビンテージ調になり、使いやすさもgoodです。

5,ポット〜ジャック間を順にはんだ付けしていく

HAKKO FX-600は370℃で作業します。
接続先の端子にハンダが足りない場合(端子の穴が見えている)予備ハンダを施します

配線の結線は下にあたる配線からするのがおすすめです。

邪魔になる配線は、ハンダごてがあたらないように、束ねたり、逸らしたり、ハンダで焼かないよう慎重に作業が必要です
既存のリード線より、一回りワイヤーが太いので、ポッドの上にハンダを追加しました。

既存ハンダはなんか流れが悪いハンダでした、その点今回使用するケスター44は溶岩のように溶け出しますので、施工性がよいですよ。
結線は、予備ハンダを溶かした瞬間にリード線を差し込んでください
その後、蓋を閉じて、音出し確認終了。

交換後の音を検証してみた

体感だけでなく、実際に音源をスペクトログラム(周波数の可視化データ)で比較してみました。
並列で見比べると、パッと見の波形パターンはほぼ同じに見えます。

見た目じゃわからんね
その通りで、ここから先はAIの得意領域なので、解析はAIに任せました。

AIモデルは3種類使用して、一番信頼できる回答を載せています
クリーントーンの変化
AとBの差分だけを抽出すると、違いがはっきり浮かび上がります。

特に12kHz〜20kHzの高域帯で、ピッキングのタイミングに同期するように規則的な差が出ていました。
これは、配線材の静電容量が下がったことで、これまで途中で目減りしていた高域成分(ピッキングのアタック音や倍音)が、ロスすることなくそのまま出力されるようになったためと考えられます。

専門的な表現が出てきてわかりにくいですが、結論こういうことです↓
「音がくっきりした」「キレが出た」という体感の変化は、高域の情報量がちゃんと出るようになった、という違いとして数値にも裏付けられていたということです。
なお、末尾部分にも大きな差分が出ていましたが、これは録音の切り出しタイミングによるものと考えられるため、配線材そのものの音質差とは切り分けて捉えています。
歪みトーンの変化
歪みトーンでは、差はさらに顕著に

同じ検証を歪みトーンでも行ってみたところ、クリーントーンとは明らかに違う結果になりました。
クリーンの差分は高域帯だけに現れていたのに対し、歪みトーンの差分は低域から高域まで帯域全体にわたって大きな差(黄〜赤)が現れています。
これは歪み(ディストーション)という処理の性質によるものと考えられます。
歪みは入力信号を非線形に増幅する処理のため、入力段階でのわずかな高域成分の違いが、生成される倍音構造全体に増幅されて波及しやすい特性があります。

これもつまりこういうことです↓
配線材の交換で変わった高域のわずかな差が、歪みを通すことで増幅されて、歪み方の質そのものを変えていたということです。
「変更前は歪み方が荒く粒が揃わない、変更後は歪みの粒立ちが揃った」という体感とも一致する結果で、クリーントーンだけでなく歪ませたときの音作りにも配線材が影響することが、データからも裏付けられた形です。
まとめ|次回はブリッジアースを確認してノイズ対策
今回のリード線交換だけで、クリーン・歪みの両方で音の輪郭がはっきりと変わることが確認できました。
「格安ギターだから音が悪いのは仕方ない」ではなく、原因を一つずつ切り分けていけば、着実に音は変わっていきます。
次回は、ノイズ対策としてブリッジアースの状態を確認していきます。
安価なギターにありがちなノイズの原因を探りながら、引き続き「格安ギターを一流に育てる」企画を進めていきます。

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